出典:NVIDIA Blog
製造業がITを「導入する」時代は、もうずいぶん前に終わった。1990年代、大手メーカーがERPやCADを取り入れたとき、それは既存の製造プロセスを効率化するための道具だった。ITはあくまで脇役で、主役は製品を作る技術と、それを支える人間の経験だった。
その関係が逆転し始めたのは、ディープラーニングが産業界に浸透した2010年代後半からだ。AIは「使うと便利なツール」ではなく、「使わなければ競争に出られないインフラ」へと変質した。画像認識、異常検知、需要予測。製造現場のあらゆる判断にAIが入り込み、AI基盤の有無が企業間の速度差を生むようになった。
LGグループは、その変化の前線にいる。家電・化学・通信・ディスプレイ・エネルギーと幅広く事業を持つこの複合企業体にとって、AIは一部門の話ではない。ロボティクスも、自動運転部品も、データセンターも、クラウドサービスも、すべてが同時にAIによって再設計される局面に入っている。
そこにNVIDIAが組む相手として選ばれたことは、単なる部品調達や実証実験の話ではない。両社が発表したのは、AIモデルのトレーニングからシミュレーション、検証、実際の製品へのデプロイまでを一貫して処理する「AIファクトリー」の共同構築だ。計算リソースを借りるのではなく、グループ全体でAI基盤そのものを持つという設計になっている。
注目すべきは、この取り組みがLGグループの1社だけを対象にしていない点だ。LGエレクトロニクス、LGイノテック、LG CNS、LGユープラス、LGエナジーソリューション、LG AI研究院と、グループ横断で複数の事業会社が参画する。各社が持つ技術・通信・エネルギー分野の強みを束ねて、NVIDIAのフルスタックなAIプラットフォームと接続する形だ。
これはLGが「AIを使う会社」になろうとしているのではなく、「AIを作って動かせるインフラを持つグループ」になろうとしている動きだ。GPUクラウドサービスとして外部企業にAI計算リソースを提供するビジネスまで視野に入れている点が、その意図を示している。
製造業がITをコストとして扱っていた時代は終わり、AIを事業の核として持つかどうかが企業の競争力を規定する時代が来た。LGとNVIDIAの連携は、その転換点における大型の賭けだ。そしてこのような動きが複合企業グループ単位で起きていることは、産業全体でAI基盤の「内製化」競争が始まっていることを意味する。
3行まとめ
- NVIDIAとLGグループは共同でAIファクトリーを構築し、ロボティクス・自動運転・データセンター・GPUクラウドサービスの4領域でAI活用を加速させる
- AIファクトリーはAIモデルのトレーニング・シミュレーション・検証・デプロイを一貫して処理できる加速コンピューティングインフラとして機能する
- LGエレクトロニクス・LG CNS・LGユープラス・LGエナジーソリューション・LG AI研究院など、グループ傘下の複数社が横断的に参画する設計になっている
※以下は詳細
AIファクトリーとは何か
「AIファクトリー」とは、AIを動かすための計算処理を集中的に担うインフラ基盤のことです。AIモデルの学習、シミュレーションによる検証、実際の製品やサービスへの組み込みまでを一貫して処理できる環境を指します。
NVIDIAが持つGPUを中心とした加速コンピューティング技術を、LGグループが自社事業に取り込む形で構築されます。
連携が対象とする4つの領域
今回の取り組みが対象とする事業領域は大きく4つです。
1つ目はロボティクスで、LGが展開するサービスロボットや産業用ロボットへのAI搭載を加速させます。2つ目は自動運転で、LGエレクトロニクスやLGイノテックが手がける車載システム・部品との連動が対象となります。3つ目はデータセンター技術で、AI処理に特化したインフラの設計・運用能力の強化を進めます。4つ目はGPUクラウドサービスで、LGグループが外部企業向けにAI計算リソースを提供するビジネスも射程に入っています。
グループ横断の設計
今回の取り組みが単独事業会社との連携と異なるのは、LGグループ傘下の複数社が対象になっている点です。LGエレクトロニクス、LGイノテック、LG CNS、LGユープラス、LGエナジーソリューション、LG AI研究院がそれぞれ異なる役割で参画し、グループ横断でAI基盤を整備します。
NVIDIAのフルスタックなエンドツーエンドAIファクトリープラットフォームと、LGグループ各社が持つ技術・インフラ・通信・エネルギー分野の強みを組み合わせる設計です。
全体まとめ
NVIDIAとLGグループは、ロボティクス・自動運転・データセンター・GPUクラウドという4領域を対象にAIファクトリーを共同構築します。AIモデル開発からフィジカルAIデータ生成、ロボットシミュレーション・トレーニング、エッジデプロイ、デジタルツインまでを統合したワークフローが対象です。
LGエレクトロニクスによるロボティクス・スマートファクトリー・モビリティへの展開、LG CNSの物流・製造向けロボットプラットフォーム、LGユープラスとLGエナジーソリューションによるDSX準拠のAIデータセンター構築、LG AI研究院のEXAONEモデル開発まで、グループ全体を巻き込む形でAI基盤の整備が進められます。