出典:Fast Company
規制当局に叩き出されたプラットフォームが、同じ市場に正面から戻ってくる。ビジネスの歴史を見れば、そういう話はいくつも思い当たる。ただ、「予測市場」というジャンルでそれをやろうとしている会社が今のアメリカに存在するという事実は、単なる企業の復活劇として読むには惜しい。
2022年、Polymarketは米商品先物取引委員会(CFTC)との和解によってアメリカ人ユーザーへのサービスを停止した。未登録のデリバティブ市場を運営していたという連邦当局の告発を受け入れる形での決着だった。以来4年、拠点をオフショアに移してグローバル展開を続けてきた。ユーザーはVPN等を使って禁止を回避し続けたとも言われ、実質的にアメリカから完全に切り離されていたわけではない。
そのPolymarketが2024年の大統領選挙で存在感を一気に高めた。世論調査が拮抗を示し続けた時期、プラットフォーム上のオッズはトランプ勝利を高確率として指し続けた。結果としてそれが当たり、「世論調査よりも予測市場が正確だった」という言説とともにPolymarketの名前は広く知られるようになった。
ここで重要なのは、知名度が上がったタイミングがアメリカへの本格帰還の直前だったという事実だ。2024年末に国内での営業を再開するにあたって、Polymarketはデリバティブ取引所QCEXを買収し、CFTCの規制を受けるライセンスを取得した。それと並行して、スポーツチームやCNBC・CNNといったメディアとの提携、ソーシャルメディアでの大規模なインフルエンサーキャンペーンを展開している。
ただし、出発点がクリーンかどうかという問題がある。ウォール・ストリート・ジャーナルやポリティコは、Polymarketが採用したインフルエンサーが実態を偽る形で宣伝を行っていたと報じた。コンプライアンス人材をRobinhoodやCoinbaseから迎え入れ、元FBI・司法省職員を監視部門に据えるという布陣を組んでいる一方で、マーケティング面では早々に火種を抱えることになった。
競合環境も見ておく必要がある。アメリカの予測市場はPolymarketが不在の間にKalshiが台頭しており、現在の取引量シェアの約3分の2はKalshiが占めている。Polymarketが帰ってきた市場は、4年前よりもずっと競争が激しい。
規制と資本の両面でPolymarketを取り巻く環境が変わっている。トランプ政権は予測市場に対して概ね支持的な姿勢を示しており、CFTCは州の規制に対して連邦法の優先を主張する訴訟まで起こしている。さらに、トランプ大統領の息子であるドナルド・トランプ・ジュニアがPolymarketに投資している事実は、政治と予測市場の距離感という別の問題も浮かび上がらせる。
「追い出された市場に、今度は正面玄関から入り直す」という話だが、信頼というプロダクトを売ろうとしている会社が最初につまずいたのがマーケティングの信頼性だったというのは、この再参入が持つ難しさを象徴している。
3行まとめ
- Polymarketは2022年にCFTCとの和解でアメリカ人へのサービスを停止し、4年間オフショアを拠点としてグローバル展開を続けてきた
- デリバティブ取引所QCEXを買収して規制ライセンスを取得し、2025年末にアメリカ国内での営業を再開した
- ソーシャルメディアでの大規模インフルエンサーキャンペーンやMLB・CNBC等とのパートナーシップを展開している一方、欺瞞的広告手法の報道やインサイダー取引疑惑など複数の問題も浮上している
※以下は詳細
4年間のオフショア運営と大統領選での知名度急上昇
Polymarketは2022年、CFTCとの和解により未登録のデリバティブ市場を運営していたとする連邦当局の告発を決着させた。アメリカ人ユーザーへのサービスはオフショアに移行したが、アメリカ人が禁止を回避する方法を定期的に見つけてきたとされている。
この期間、インサイダー取引疑惑や戦争・暴力に関連した賭けを認めているとする批判にもさらされてきた。それでも2024年の大統領選挙では、世論調査が拮抗を示す中でトランプ勝利を高確率として示し続け、結果的にその予測が当たったことで国際的な注目を集めた。
規制ライセンス取得による再参入の経緯
アメリカへの本格再参入は、デリバティブ取引所QCEXの買収によって実現した。QCEXの取得によりCFTCの規制を受けるライセンスを確保し、2025年末にアメリカ国内での営業を再開している。
米国版のPolymarket U.S.はブロックチェーン技術上に構築された国際版とは異なり、CFTCの規制を受けるより集中管理された仕組みで動作し、資金調達は従来の米ドルで行われる。取り扱う契約数は国際版よりも大幅に少なく、規制も厳しい。ルーズベルト研究所のTodd Phillipsは「Polymarket U.S.は米国の法律と規制に準拠することが求められている。Polymarket Internationalは何でもありの場所だ」と述べている。
ブランドキャンペーンとコンプライアンス整備
再参入に際して、Polymarketは複数の施策を同時に進めている。
マーケティング面では、ソーシャルメディアインフルエンサーを起用してTikTokなどでバイラルキャンペーンを展開。X(旧Twitter)のアカウントは数百万人のフォロワーを持ち、時事的な投稿を継続している。主要スポーツチームやMLBとのパートナーシップ契約を締結したほか、CNBCやCNNをはじめとする報道機関とも提携している。
コンプライアンス面では、RobinhoodからMegan McGrathをチーフコンプライアンスオフィサーとして採用。Coinbase出身のDan LeeとNatalie Oblaznyを幹部に迎え入れたほか、元司法省・FBI職員をエンフォースメント部門長およびサーベイランス部門長として採用している。米国事業責任者のDan Leeは「私たちがここで構築しているのは信頼というプロダクトだ」と述べている。
競合Kalshiとの市場争い
アメリカの予測市場でPolymarketが戻ってきた先には、すでに強力な競合が存在している。国内ライバルのKalshiはスポーツ賭けを強みにアメリカ市場を主導しており、ブロックチェーン分析会社Duneによると両プラットフォームの合計取引量は260億ドル以上に上る。そのうち約3分の2はKalshiでの取引が占めている。
規制環境についてはトランプ政権が予測市場業界に対して支持的な姿勢を示しており、CFTCは連邦法が州の規制に優先すべきと主張して州を相手取った訴訟を起こしている。また、ドナルド・トランプ・ジュニアが自身のベンチャーキャピタルを通じてPolymarketに投資している。
浮上している疑惑と課題
再参入のスタートは順調とは言えない部分も出ている。ウォール・ストリート・ジャーナルは、Polymarketのマーケティングキャンペーンで採用されたインフルエンサーが、実際には架空の取引でPolymarketで稼いでいるように見せる欺瞞的な手法を使っていたとする証拠を報じた。ポリティコも、Polymarketの幹部が少なくとも20人の政治系コンテンツクリエイターに対価を支払い、その多くがパートナーシップを公表していなかったと報じている。これらの報道を受け、同社はマーケティング・プロモーションキャンペーンを調査中だとしている。
国際プラットフォームをめぐる問題も続いている。米陸軍軍曹がベネズエラのマドゥロ大統領拘束に関する賭けを理由に起訴された件では、当該取引がPolymarketの国際プラットフォーム上で行われていた。また、トランプ大統領がソーシャルメディアで米・イラン停戦を発表する数時間前から数分前にかけて、国際プラットフォーム上で50の新規アカウントが停