出典:Fast Company
2013年、マーク・ザッカーバーグがロシアのVKontakteを買収しようとした際、パベル・ドゥーロフはその打診を断った。翌年、ロシア当局からVKontakteのユーザーデータ開示とウクライナの反政府活動家のページ削除を求められたとき、ドゥーロフはやはり拒否した。その直後、彼はロシアから事実上追い出される形でVKontakteの経営権を失い、国外へ去った。
テレグラムはそうして生まれた。国家の要求に従わないことを選んだ経営者が、国家が干渉できないプラットフォームを作ることを宣言して立ち上げたサービスだ。
その後10年以上、テレグラムは世界で9億人以上のユーザーを抱えるまでに成長した。暗号化と匿名性を武器に、権威主義的な政府の検閲が届きにくい空間として、活動家からジャーナリスト、そして犯罪者まで幅広い層が流入した。プラットフォームが大きくなるほど、各国政府にとって「無視できない存在」になっていく。その緊張が、2024年のフランスでの逮捕という形で噴き出した。
そして今度はロシアが動いた。FSBがドゥーロフをテロ支援などの罪で刑事告訴し、国際指名手配リストに加えたと報じられた。ロシアが2018年から2020年にかけてテレグラムの遮断を試みたが失敗した経緯を踏まえると、今回の動きは技術的な封鎖の失敗を法的・外交的な圧力で補おうとする試みとも読める。
この話が単なる一経営者の法的トラブルにとどまらない理由は明らかだ。プラットフォームの運営者は今、複数の国家から同時に司法管轄権を主張される時代に入っている。フランスは予備起訴し、ロシアは国際指名手配する。それぞれの国家が異なる法体系と異なる要求を武器に、同一人物に圧力をかけている。
かつて「インターネットは国境を持たない」と言われた時代があった。だが現実には、プラットフォームを動かす人間は必ずどこかに存在し、どこかの法律の下に置かれる。ドゥーロフがドバイに拠点を置くのも、UAEがロシアにもフランスにも引き渡し条約を持たないという事実と無関係ではない。プラットフォームの「本社の場所」が、今や経営者にとって最重要の生存戦略の一つになっているということを、この一件は示している。
3行まとめ
- ロシアのFSBがテレグラム創業者パベル・ドゥーロフをテロ支援などの罪で刑事告訴し、国際指名手配リストに追加した。
- ドゥーロフはすでに2024年にフランスで逮捕・予備起訴されており、2025年3月にドバイへ戻ったと本人が明かしている。
- ロシアでは有罪となった場合、最高で終身刑が科される可能性がある。
※以下は詳細
ロシアによる告訴の内容
FSBは、テレグラムの管理側がウクライナの情報機関・テロ組織・過激主義組織によるロシア国内でのテロ・妨害行為、大量殺人、サイバー詐欺の準備・調整に使用された多数のチャンネル・チャット・ボットを削除しなかったと非難している。
さらに、テレグラム上の人気出会いチャットボットを通じてロシア人を勧誘し、破壊・テロ活動に引き込んでいたとも主張している。2025年7月以降、12歳から22歳の利用者46人がロシア各地で拘束されたとしている。
ドゥーロフ自身は今年初め、ロシア当局が自分への刑事捜査を開始したことを公表済みで、テレグラムへのアクセス制限の口実をでっち上げ、プライバシーと言論の自由を抑圧しようとしていると当局を非難していた。
フランスでの経緯
ドゥーロフは2024年にパリで逮捕され、フランス当局からプラットフォーム上での犯罪活動を容認したとして予備起訴された。その後フランスで数カ月を過ごし、2025年3月にドバイへ戻ったと本人が述べている。クレムリンは当時、フランス当局によるドゥーロフへの対応を「選択的」だと批判していた。
テレグラムの現状
テレグラムの公式サイトによると、同社はドバイを拠点としており、フランスとUAEの二重国籍を持つドゥーロフも現地に居住している。ロシアは2018年から2020年にかけてテレグラムの遮断を試みたが失敗しており、現在は制限措置を講じている。テレグラム側は今回の件に関するコメント要請に応じていない。
全体まとめ
ロシアのFSBがテレグラム創業者パベル・ドゥーロフをテロ支援などの罪で刑事告訴し、国際指名手配リストに加えた。ドゥーロフはすでにフランスでも予備起訴されており、ロシアでは有罪となった場合に最高終身刑が科される可能性がある。ロシアは2018年から2020年にかけてテレグラムの遮断を試みた経緯があり、現在も制限措置を続けている。テレグラム側はこの件についてコメントを出していない。