0545
SIGNAL 経営
No.0545

AppleとKlarnaが組んだiPhoneリースは、誰が得して誰が損するのか

ADVERTISEMENT

出典:ZDNet

2007年、初代iPhoneが登場したとき、Appleは「電話を再発明する」と言った。あの瞬間から、スマートフォンは「買うもの」として定着した。人々は数年に一度、数万円から十数万円を払ってデバイスを手に入れ、古くなれば売るか捨てるかを選んだ。その前提は、約20年間ほとんど変わっていない。

変わり始めているのは、Appleがその前提を自ら壊しにきている点だ。

Appleは今回、後払い・分割払いで知られるフィンテック企業Klarnaと提携し、Upgrade Programを刷新した。iPhoneをはじめとするAppleデバイスを月額料金でリースし続ける仕組みだ。期間が終われば端末を返却して最新機種に乗り換えられる。所有ではなく、利用権を買い続ける設計になっている。

これをハードウェア販売の補完策と見るのは、少し浅い。

Apple Musicが始まった2015年前後、音楽を「所有する」ことの意味は実質的に消えた。iTunes Storeで楽曲を1曲ずつ購入していたユーザーが、月額サブスクへ移行した。映像はApple TV+、ストレージはiCloud、ゲームはApple Arcade。Appleが手がけるサービスは、ことごとく「月額の束」として設計されてきた。残っていたのはデバイスそのものだけだった。

今回の動きはその最後のピースを埋めにいく試みだ。

利害を整理すると見えやすい。Appleにとっては、一度きりの売り切りではなく、継続的な月次収益として計上できる顧客が増える。Klarnaにとっては、Appleブランドを通じて信用力の高い顧客層へのアクセスが手に入る。月額32ドルという数字は、iPhoneを「高い買い物」と感じる層に対して、心理的なハードルを大幅に下げる効果を持つ。

では誰が損をするか。長期保有して売却益を得ていたユーザーは、リース契約の中では資産としての端末価値を一切回収できない。途中解約すれば残リース料と同額の違約金が発生する。月額の低さと引き換えに、所有権と柔軟性を手放すことになる。

テクノロジーの歴史を振り返ると、サブスク化が進むたびに同じことが起きてきた。参入コストが下がり、ユーザー数は増える。一方で、長期的なコストは上昇し、やめるための離脱コストも高くなる。Appleのエコシステムはもともとその設計が緻密だが、デバイスまで月額に組み込まれれば、乗り換えの摩擦はさらに大きくなる。

今、起きているのはiPhoneの購入方法の変化だけではない。Appleが顧客との関係を「取引」から「継続契約」へと塗り替えていく過程の、ひとつの節目にあたる。


3行まとめ

  • AppleはBNPLサービスのKlarnaと提携し、iPhoneなどをリースするUpgrade Programを刷新した
  • リース期間は24または36ヶ月で、月額料金はローンより低いが、期間終了後にデバイスは手元に残らない
  • 途中解約時は残リース料と同額の違約金が発生し、売却やトレードインによる資産価値も得られない

※以下は詳細

ADVERTISEMENT

Apple Upgrade Programの基本的な仕組み

Apple Upgrade Programは、対象Appleデバイスを月額料金で一定期間リースする仕組みです。対象はiPhone、iPad、Mac、Apple Watchです。

リース期間が終了すると、デバイスを良好な状態で返却して新たなリースを開始するか、追加料金を支払って手元に残すかを選べます。破損・紛失・盗難の責任は利用者が負います。AppleCareはプログラムに含まれていませんが、リース開始後に別途追加できます。

Klarnaとの提携で変わること

新しいUpgrade ProgramはKlarnaが管理します。Klarnaは「Buy Now, Pay Later(BNPL)」の決済オプションを提供するフィンテック企業です。

KlarnaとのリースはApple Upgrade Programにおいて追加利息は発生しません。ファイナンス(分割購入)ではなく、あくまでリース契約です。

リース・ローン・一括購入を比較すると

リースはローンより月額が低くなりますが、期間終了後にデバイスは手元に残りません。

例として、iPhone 17 Pro(開始価格1,100ドル)を24ヶ月リースした場合、月額は32ドル、期間終了時の支払総額は768ドルです。一括購入より332ドル少なくなりますが、2年後に端末は返却となります。

Apple Cardによる24ヶ月・0%金利ローンで同機種を購入した場合、月額は約46ドルです。こちらは2年後に端末を所有でき、売却やトレードインも可能です。AffirmなどのBNPLオプションはAPRが0〜36%と幅があり、Apple Card経由の無金利ローンより高くなる場合があります。

このプログラムが向く人・向かない人

向いているのは、2〜3年ごとに最新モデルへ乗り換えたいユーザーや、月々の支出を抑えたいユーザーです。

向かないのは、デバイスを最終的に自分のものにしたい人、節約を目的にする人、毎年乗り換えを希望する人です。プログラムを途中終了する場合は残りのリース料金と同額の解約料が発生します。売却やトレードインによる資産価値も得られません。

全体まとめ

AppleはKlarnaと提携し、iPhoneをはじめとするAppleデバイスを月額でリースするUpgrade Programを刷新しました。リース期間は24または36ヶ月で、月額料金はローンより低く設定されていますが、期間終了後にデバイスは手元に残りません。途中解約には残リース料と同額の違約金が発生します。月額の低さで定期的に端末を乗り換えたいユーザー向けの設計で、節約目的や所有を重視するユーザーには不向きな内容です。

ADVERTISEMENT
NEXT READS
SIGNALへ戻る
— END OF ARTICLE —
SIGNAL